会社に縛られない就労パス:ONE Pass・PEP・EntrePass・Tech.Pass の条件と、通常の EP との違い
最終確認:2026年10月1日
シンガポールの就労パスは、ふつうは会社が申請し、その会社で働くことが前提です。転職すれば、新しい会社がパスを申請し直します。一方で、高収入の専門職や起業家には、本人が申請でき、特定の会社にひもづかないパスが用意されています。この記事では、MOM(人材開発省)と EDB(経済開発庁)の公式情報をもとに、4つのパスの条件と、通常の EP との違いを整理します。
4つのパスと EP の比較
| 通常の EP | ONE Pass | PEP | EntrePass | |
|---|---|---|---|---|
| 対象 | 専門職・管理職(内定が必要) | 各分野のトップ人材 | 高収入の EP 保持者、海外の専門職 | 革新的な事業を始める起業家 |
| 月給の基準 | S$5,600〜(年齢で上がる) | 固定月給 S$30,000 以上 | 固定月給 S$22,500 以上 | 定めなし |
| 申請する人 | 会社 | 本人(会社も可) | 本人 | 本人 |
| 審査の目安 | 10営業日以内に処理または連絡 | 大半は4週間以内 | 大半は6週間以内 | 大半は6週間以内 |
| 有効期間 | 初回は最長2年、更新は最長3年 | 最長5年(更新も最長5年) | 最長3年(更新できない) | 最初は最長1年 |
| 転職したとき | 新しい会社が申請し直す | 申請し直さなくてよい | 申請し直さなくてよい(1週間以内に届け出) | 自分の会社にひもづく |
| 起業 | — | できる | できない | できる(これが目的) |
手数料はどのパスも、申請 S$105、発行 S$225 です。承認(IPA)が出てから6か月以内に入国して、パスを発行してもらいます。
シンガポールの就労ビザの種類と違い →通常の EP・S Pass の条件と最低月給は、こちらにまとめています。ONE Pass:固定月給 S$30,000 以上、最長5年
ONE Pass(Overseas Networks & Expertise Pass)は、ビジネス・芸術文化・スポーツ・学術研究などの分野のトップ人材向けのパスです。4つのうち最も自由度が高く、複数の会社を同時に始めたり、運営したり、働いたりできます。
申請できる人
- 直近の給与:申請までの連続12か月、固定月給が S$30,000 以上だった人
- これからの給与:シンガポールの会社で、固定月給 S$30,000 以上で働く予定の人(働き始める日の6か月前から申請できる)
- 顕著な実績:スポーツ・芸術文化・学術研究で顕著な実績がある人(月給の基準なし)
- 海外から申請する人や、これからの給与で申請する人は、勤務先が大きな会社(時価総額 5億米ドル以上、または年間売上 2億米ドル以上)であることが条件
- すでにシンガポールで就労パスを持っている人は、シンガポールで1年以上働いていること
基準になるのは「固定月給」で、賞与や変動する手当は含みません。複数の会社から給与を得ている場合は、1つの会社からの固定月給が S$30,000 以上である必要があります。
できること・気をつけること
- 転職してもパスを申請し直さなくてよい
- 仕事を失っても、すぐに出国する必要はない。ただし MOM は毎年、仕事と収入の報告を求めることがあり、正当な理由のない長い失業はパスに影響しうる
- 会社の人数枠・雇用税がなく、EP の審査で使う COMPASS も不要
- 配偶者は、LOC(就労の同意書)を取れば働ける。申請は無料で、働けるのは1つの雇用主のもとだけ
- 更新の条件は、シンガポールでの過去5年間の固定月給が平均 S$30,000 以上であること。または、シンガポールで会社を運営し、現地の人を5人以上、EP の最低月給以上で雇っていること
- ONE Pass と EP を同時に申請することはできない。EP から切り替えるときは、家族のパスも申請し直す
2027年1月28日から「AI・テック」の枠が加わる
テック企業の創業者・経営層・技術職として通算5年以上の経験がある人向けの枠です。固定月給 S$22,500 以上に、権利の確定した株式報酬などを合わせて月 S$30,000 以上あれば申請できます。下の Tech.Pass に代わる制度です。
PEP:固定月給 S$22,500 以上、最長3年で更新なし
PEP(Personalised Employment Pass)は、高収入の EP 保持者や海外の専門職向けのパスです。どの業種の仕事にも就けて、転職してもパスを申請し直す必要がありません。
- 条件:固定月給 S$22,500 以上(EP 保持者も、海外から申請する人も同じ)。海外の人は、直近の給与が申請前6か月以内のものであること
- 対象外:フリーランスの人、会社の個人事業主・パートナー、株主でもある取締役、スポンサー制度の EP 保持者
- 仕事を失っても、続けて6か月までは滞在して次の仕事を探せる。6か月を超えたらパスを取り消さなければならない
- 起業はできない。事業を始めたい場合は ONE Pass か EntrePass を申請する
- 有効期間は最長3年で、1回しか発行されない。その後も働くには、EP などを取る
保持者の義務
- 年間の固定給を S$270,000 以上に保つ(その年に働いた月数に関係なく)
- 毎年1月31日までに、前の年の給与を MOM に申告する
- 就職・退職・転職のたびに、1週間以内に MOM に届け出る
PEP は「次の仕事を探す余裕がほしい」「短い間隔で転職する可能性がある」人には便利ですが、3年で終わること、年間の給与の条件があることに注意が必要です。固定月給が S$22,500 以上あれば、通常の EP でも COMPASS と求人広告の義務が免除されるため、同じ会社で長く働くつもりなら EP のままでも不便は少ないでしょう。
EntrePass:革新的な事業を始める起業家向け
EntrePass は、ベンチャーキャピタルなどの支援を受けている事業や、革新的な技術をもつ事業を、シンガポールで始める人のためのパスです。最低月給の定めはありませんが、事業の中身が問われます。
- 会社:シンガポールで登記した(またはこれから登記する)株式会社で、本人が株式の30%以上を持っていること
- そのうえで、次のどれか1つ:投資家から1回で S$100,000 以上を調達した/認められたインキュベーター・アクセラレーターの支援を受けている/同種の事業を創業して売却した経験がある/事業の強みになる知的財産を持っている/シンガポールの大学・研究機関と研究協力をしている
- 有効期間は、最初と1回目の更新が最長1年、その後は最長2年。更新のたびに、事業の支出と現地の雇用の基準が上がっていく
- 家族を呼ぶにも条件がある(配偶者と子どもは、年間の事業支出 S$100,000 以上と現地雇用1人以上、など)
飲食店やマッサージ店を開くためのパスではない
コーヒーショップ、ホーカー、フードコート、バー、ナイトクラブ、カラオケ、足つぼ、マッサージ、鍼、雇用斡旋業などは、EntrePass の対象外と明記されています。日本食の店や美容・リラクゼーションの店を開きたい場合は、別のパスで進められるかを、会社設立の専門家に相談してください。
Tech.Pass:2027年1月28日から受付終了
Tech.Pass は、テック企業やベンチャーキャピタルで主導的な役割を5年以上務めた人向けのパスで、EDB が窓口です(直近1年の固定月給 S$22,500 以上が条件)。EDB は、2027年1月28日から新規の申請も更新の申請も受け付けないと発表しています。すでに持っている人は、期限まで使えます。これから申請を考える人は、後継にあたる ONE Pass の「AI・テック」の枠を検討することになります。
EP のままでも受けられる優遇
- 固定月給が S$22,500 以上なら、EP の審査で COMPASS が免除され、会社の求人広告の義務も免除される
- 人手不足の職種リスト(SOL)にあるテック職種で、年齢に応じた月給の基準などを満たす人は、5年の EP の対象になることがある
- ただし、どちらも EP であることは変わらない。会社が申請し、転職すれば新しい会社が申請し直す
どれを選ぶか
| 状況 | 検討するパス |
|---|---|
| 固定月給 S$30,000 以上で、複数の会社に関わりたい・起業もしたい | ONE Pass |
| 固定月給 S$22,500 以上で、転職のたびの申請や失業時の出国を避けたい | PEP(3年限り) |
| 固定月給 S$22,500 以上で、同じ会社で働き続ける | EP のまま(COMPASS・求人広告は免除) |
| 投資家の支援や技術をもつ事業を始める | EntrePass |
| 上のどれにも当てはまらない | 通常の EP・S Pass(会社が申請) |
どのパスも個別に審査され、条件を満たしていても必ず承認されるわけではありません。EP から切り替えるときは、新しいパスが承認されて発行の準備ができてから、いまの EP を会社に取り消してもらいます。取り消してから新しいパスが発行されるまでの間は働けないので、日程を会社とよく相談してください。
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+シンガポールの就労パスを自分で申請できますか?
通常の EP・S Pass は会社が申請しますが、ONE Pass・PEP・EntrePass は本人が申請できます。ONE Pass は固定月給 S$30,000 以上、PEP は S$22,500 以上が条件で、EntrePass は革新的な事業を始める起業家向けです。
+ONE Pass と PEP の違いは何ですか?
ONE Pass は固定月給 S$30,000 以上で最長5年、更新でき、複数の会社で働くことも起業もできます。PEP は S$22,500 以上で最長3年、更新はできず、起業もできません。PEP には年間 S$270,000 以上の固定給を保つ条件があります。
+PEP を持っていて仕事を失ったら、どうなりますか?
続けて6か月までは、シンガポールに滞在して次の仕事を探せます。6か月を超えて仕事がない場合は、パスを取り消さなければなりません。
+日本食レストランを開くために EntrePass を取れますか?
取れません。飲食店(コーヒーショップ、ホーカー、フードコート、バーなど)は EntrePass の対象外と明記されています。EntrePass は、投資家の支援や革新的な技術をもつ事業が対象です。
+Tech.Pass はまだ申請できますか?
EDB は、2027年1月28日から新規・更新とも受け付けないと発表しています。2027年1月28日からは、ONE Pass に AI・テック向けの枠が加わります。
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