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シンガポールで副業はできる?EP・S Pass・DP・PR の場合

最終確認:2026年10月4日

シンガポールで働きながら、別の会社でも働きたい、個人で仕事を受けたい、日本の取引先の仕事を続けたい、と考える人は少なくありません。ただ、シンガポールの就労パスは「どの会社で働くか」とセットで発行されるため、日本の感覚で副業を始めると、パスの条件に違反するおそれがあります。この記事では、MOM(人材開発省)の公式情報と法律の条文をもとに、パスの種類ごとに何ができて何ができないかを整理します。

結論:パスの種類で大きく違う

まず全体像です。「できる」と書いたもの以外は、MOM の許可や別のパスが必要か、公式情報ではっきりしないものです。

パスごとの副業の扱い(MOM の公式情報)
パス別の会社で働く自分で事業・フリーランス
EPできない(パスの雇用主のためだけに働く)。別の会社の取締役は LOC が必要公式に認める記載なし。株主になることはできる
S Passできない(1つの雇用主のみ)できない(取締役・個人事業主になれない)。起業するなら退職して EntrePass
ONE Passできる(複数の会社で同時に働ける)できる(会社を始める・運営できる)
PEP雇用主に縛られないパスだが、同時に複数の会社で働けるかは公式情報で未確認できない。起業するなら EntrePass か ONE Pass
DP・LTVP自分の就労パス(DP-WP・EP・S Pass、LTVP は LOC など)が必要DP は事業オーナー向け LOC。海外の組織・顧客の仕事はパス不要と MOM が明記
PR・シンガポール国民就労パスは不要就労パスは不要

パスで認められていても、雇用契約は別

就労パスの上で認められていても、会社の雇用契約や就業規則で副業が制限されていることがあります。MOM も ONE Pass について「雇用契約の条件に従う」と書いています。始める前に、自分の契約を確認してください。

EP・S Pass の原則:指定された雇用主のためだけに働く

MOM は、就労パスを持つ人は「指定された雇用主のためだけに働かなければならない」とし、「追加の仕事をしたり、シンガポールで追加の収入を得る活動をしたりしてはならない」と明記しています。週末だけのアルバイトや、知人の会社の手伝いで報酬を受け取ることも、この原則に反するおそれがあります。

S Pass は起業も取締役もできない

  • S Pass で働けるのは、一度に1つの雇用主だけ
  • S Pass 保持者は、シンガポールで事業を所有・経営できない。ACRA(会計企業規制庁)に個人事業主・パートナー・取締役・会社秘書役として登録すると、パスの条件違反となり、パスは取り消され、就労禁止の処分を受ける
  • シンガポールで事業を始めたい場合は、今の仕事を辞めて EntrePass を申請するよう MOM は案内している

EP は「兼任の取締役」に LOC という道がある

EP の人が、パスの会社とは別の会社の取締役になるには、MOM の LOC(Letter of Consent:就労の同意書)が必要です。取締役の仕事も「仕事」として扱われるためです。

  • 申請するのは、EP の人を取締役に迎える会社。EP の今の雇用主が反対していないことを確認したうえで申請する
  • MOM が原則として認めるのは、取締役になる会社が EP の雇用主と資本関係にあり(ACRA の記録で確認できること)、本業に関係する目的で就任する場合
  • 資本関係のない会社の場合は、その業界を所管する政府機関が審査し、支持が得られれば認められることがある
  • 審査は5週間以内。LOC の有効期限は今の EP の期限まで。EP を更新したら LOC も申請し直す
  • 報酬のない慈善目的のボランティア活動なら、LOC はいらない

つまり LOC は、子会社やグループ会社の取締役を兼ねるような、本業に関わる場合を想定した仕組みです。好きな副業を始めるための許可ではありません。なお MOM は、EP の人がシンガポールで登記された会社の株主になることは認めています。株を持つことと、その会社で働く・経営することは別に考えてください。

シンガポールの就労パスの種類 →EP・S Pass の条件と最低月給、DP・LTVP の働き方をまとめています。

ONE Pass は複数の会社で働ける、PEP は起業できない

本人が申請できる特別な就労パスのうち、副業の自由度が最も高いのは ONE Pass です。MOM は、複数の会社を同時に始め、運営し、働くことができると明記しています(雇用契約の条件がある場合はそれに従う)。その代わり、毎年1月31日までに、前の年の仕事の内容と年収を MOM に報告します。

PEP(Personalised Employment Pass)は「雇用主に縛られない」パスですが、起業や事業的な活動はできません。フリーランスとして働く人や、個人事業主・パートナーは PEP の対象外です。起業したい場合は、EntrePass か ONE Pass を申請するよう MOM は案内しています。PEP で同時に複数の会社に雇われてよいかは、公式情報では確認できませんでした。

シンガポールで自分の事業を始めたい人向けのパスが EntrePass です。ベンチャーキャピタルの出資を受けている事業や、革新的な技術を持つ事業が対象で、副業として小さく始めるためのパスではありません。

ONE Pass・PEP・EntrePass の条件 →給与の基準・期間・家族の扱いをまとめています。

DP・LTVP の人は、自分の就労パスが必要

DP(Dependant's Pass)や LTVP(Long-Term Visit Pass)は、滞在のためのパスです。シンガポールの会社で働くには、DP なら会社が DP-WP・EP・S Pass を申請し、自分で事業をするなら事業オーナー向けの LOC を取ります。ICA が発行する LTVP(シンガポール人・PR の配偶者など)は LOC で働けます。

一方、MOM は DP などの滞在パスの人について、シンガポールにいながら海外の組織や顧客のために働く・サービスを提供する場合は work pass がいらない、とはっきり書いています。シンガポールの組織(ACRA に登録された会社など)や顧客のための仕事は、報酬を目的とするすべての活動で work pass が必要です。報酬のない慈善目的のボランティアは、パスなしで参加できます。

DP で働くには:DP-WP・EP・S Pass →DP の人が働く方法と、事業オーナー向け LOC をまとめています。LTVP で働くための LOC と PLOC →シンガポール人・PR の配偶者が働くときの手続きです。

PR・シンガポール国民は就労パス不要

就労パスについて定める法律(EFMA:Employment of Foreign Manpower Act)では、「外国人(foreigner)」をシンガポール国民でも PR でもない人と定めています。PR は外国人に当たらないため、別の会社で働く場合も、自分で事業をする場合も、就労パスはいりません。ただし、雇用契約による制限や、税金の申告は別に考える必要があります。

日本の会社・取引先の仕事を続ける場合

シンガポールに移ったあとも、日本のクライアントからリモートで仕事を受けたい、という相談はよくあります。パスの種類によって、公式情報の明確さが違います。

日本の取引先の仕事をシンガポールから続ける場合
パスMOM の公式情報
DP など滞在パス海外の組織・顧客のための仕事なら work pass は不要と明記
EP・S Pass など就労パス「シンガポールで追加の収入を得る活動をしてはならない」とする一方、海外の顧客の仕事を名指しした説明は見当たらない
ONE Pass複数の会社で働けるが、雇用契約の条件に従う
PR・国民就労パスは不要

EP・S Pass の人が、日本の会社の仕事をシンガポールから続けてよいかは、MOM の公開情報でははっきりしません。DP 向けの説明をそのまま当てはめて「問題ない」と判断するのは避け、始める前に MOM に問い合わせてください。あわせて、今の会社の雇用契約で副業が認められているかも確認しておきましょう。

税金:シンガポールで働いた分は課税の対象

IRAS(内国歳入庁)は、シンガポールで稼いだ、またはシンガポールから生じた所得は課税され、海外の所得をシンガポールで受け取っても原則として課税されない、としています。ただし例外があり、そのひとつが「シンガポールで外国の雇用主のために働く場合」です。日本の会社から日本の口座に給与が払われても、シンガポールで働いた分は課税の対象になります。

  • 雇用契約ではなく業務委託(contract for service)で働く人は、IRAS では自営業者(self-employed)として扱われ、所得は申告書の「Trade, Business, Profession or Vocation」の欄で申告する
  • フリーランスとしてシンガポールから日本の顧客に仕事を提供した報酬の扱いを、名指しで説明した IRAS のページは見当たらなかった。課税されるかは IRAS に確認する
  • 同じ所得が日本でも課税される場合は、二重課税を避けるための救済を申請できる場合がある

日本側では、国税庁によると、日本の「居住者」は国内外のすべての所得に課税され、「非居住者」は日本国内で生じた所得(国内源泉所得)にだけ課税されます。居住者かどうかは、住所(生活の本拠)がどこにあるかなどで判断されます。日本の取引先からの報酬が日本でどう課税されるかは、働き方や契約の内容で変わるため、税務署や税理士に相談してください。

シンガポールの所得税の基本 →居住者の判定、税率、申告の流れをまとめています。

パスなしで働いた場合の罰則

EFMA では、外国人が有効な就労パスなしで雇われること、有効な就労パスなしで自営業として活動することを、どちらも禁止しています。法律上の「自営業の外国人」には、雇用契約ではなく、シンガポールで報酬を目的とした活動をする人が含まれます。

EFMA の主な罰則(S$)
違反罰則
有効なパスなしで雇われて働く(本人)罰金 $20,000 以下、または2年以下の禁錮、またはその両方
有効なパスなしで自営業として活動する(本人)罰金 $20,000 以下、または2年以下の禁錮、またはその両方。2回目以降は1か月以上2年以下の禁錮と、$20,000 以下の罰金
有効なパスのない外国人を雇う(雇用主)罰金 $5,000〜$30,000、または12か月以下の禁錮、またはその両方。2回目以降(個人)は罰金 $10,000〜$30,000 と1か月〜12か月の禁錮
就労パスの条件に違反する罰金 $10,000 以下、または12か月以下の禁錮、またはその両方(MOM の案内)

MOM は、パスなしで自営業をして有罪になった外国人は、シンガポールで働くことを永久に禁止されると発表しています。S Pass の人が会社の取締役などに登録した場合も、パスの取り消しと就労禁止の対象になります。今の仕事とシンガポールでの生活そのものを失うおそれがあるため、迷ったら始める前に確認してください。

副業を始める前のチェックリスト

  • 自分のパスの種類を確認したか(EP・S Pass・ONE Pass・PEP・DP・LTVP・PR)
  • 相手はシンガポールの会社・顧客か、海外の会社・顧客か
  • 雇われる働き方か、業務委託・自分の事業か
  • EP で別の会社の取締役になるなら、迎える側の会社が LOC を申請したか
  • 今の会社の雇用契約・就業規則で、副業が制限されていないか
  • 公式情報ではっきりしない場合、MOM に事前に問い合わせたか
  • シンガポールと日本の税金の扱いを、IRAS・税務署・税理士に確認したか

よくある質問

+EP で週末だけアルバイトをしてもいいですか?

できません。MOM は、就労パスを持つ人は指定された雇用主のためだけに働き、追加の仕事やシンガポールで追加の収入を得る活動をしてはならないとしています。短時間・短期でも同じです。

+EP で別の会社の取締役になれますか?

MOM の LOC(就労の同意書)を取れば可能です。申請するのは取締役に迎える側の会社で、原則として EP の雇用主と資本関係がある会社で、本業に関係する目的であることが条件です。資本関係のない会社は、業界を所管する政府機関の審査になります。

+S Pass で自分の会社を作れますか?

できません。S Pass の人は事業を所有・経営できず、取締役や個人事業主として登録するとパスが取り消され、就労禁止の処分を受けます。起業したい場合は、今の仕事を辞めて EntrePass を申請するよう MOM は案内しています。

+ONE Pass なら副業できますか?

MOM は、ONE Pass では複数の会社を同時に始め、運営し、働くことができるとしています。ただし雇用契約の条件がある場合はそれに従います。毎年1月31日までに、前の年の仕事の内容と年収を MOM に報告します。

+DP で日本の会社の仕事をリモートで続けられますか?

MOM は、DP などの滞在パスの人がシンガポールにいながら海外の組織・顧客のために働く場合、work pass は不要としています。シンガポールの会社・顧客のための仕事にはパスが必要です。税金の扱いは別に確認してください。

+PR になれば副業は自由ですか?

就労パスは必要ありません。法律上、PR は「外国人」に当たらないためです。ただし、今の会社の雇用契約による制限や、所得の申告は別に確認が必要です。

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