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帯同家族(DP 保持者)がシンガポールで働く方法

最終確認:2026年9月28日

配偶者の赴任に帯同してシンガポールに来た人(いわゆる駐妻・駐夫)が現地で働くには、自分用の就労パスが必要です。以前は DP のまま LOC という許可で働けましたが、2021年5月から仕組みが変わりました。この記事では、DP 保持者が働くための3つの道と、それぞれの条件・会社側の負担・注意点、仕事探しの進め方を順に説明します。

2021年5月からのルール変更

シンガポールでは、外国人が働くには就労に有効なパスが必要です。これは雇用形態や勤務時間に関係なく適用されます。

DP(Dependant's Pass)は、EP や S Pass を持つ人の配偶者・子どもが滞在するためのパスです。以前は、DP 保持者でも雇用主が LOC(Letter of Consent)を取れば、DP のまま働くことができました。

2021年5月1日から、DP 保持者の LOC は原則として廃止されました。現在、DP 保持者が雇用されて働くには、雇用主に EP・S Pass・Work Permit のいずれかを申請してもらう必要があります。DP 保持者向けの Work Permit は、一般に DP-WP と呼ばれます。

例外として、自分で事業を営む DP 保持者向けの LOC は残っています。これについては後半の「事業オーナー向け LOC」で説明します。

ポイント

「DP を持っていれば働ける」「会社が LOC を出せば働ける」というのは2021年4月以前の情報です。古いブログや体験談を読むときは、書かれた時期を確認してください。

働くための3つの道:DP-WP・EP・S Pass

就労パスの申請は、本人ではなく将来の雇用主が行います。つまり、先に採用先を決め、その会社に申請してもらう流れです。DP 保持者が選べるパスは次の3種類です。

DP 保持者が働くときのパスの比較(2026年9月時点)
項目DP-WPS PassEP
向いている仕事職種を問わず幅広い中技能の仕事専門職・管理職
最低月給なし一般 S$3,300〜S$4,800、金融 S$3,800〜S$5,650一般 S$5,600〜S$10,700、金融 S$6,200〜S$11,800
その他の審査国籍不問通常の S Pass 基準COMPASS で40点以上
有効期間DP に連動パスごとに決まるパスごとに決まる
DP の扱いDP のままDP は取り消しDP は取り消し
会社の雇用枠WP の枠を使うS Pass の枠を使う(サービス業10%)なし
会社の雇用税かかるかかる(月 S$650/人)なし

EP と S Pass の最低月給は年齢が上がるほど高くなります。表の幅は、若い年齢層の下限から高い年齢層の上限までを示しています。

DP-WP:DP のまま働ける

DP-WP は、DP 保持者のための Work Permit です。通常の Work Permit と違い、次の特徴があります。

  • 国籍を問わない。通常の Work Permit にある出身国の制限がない
  • 最低月給の基準がない。短時間の仕事や給与水準が EP・S Pass に届かない仕事でも対象になる
  • 有効期間は DP に連動する。DP が続く限り働ける一方、DP が終われば DP-WP も終わる
  • 通常の Work Permit で必要な6か月ごとの健康診断と保証金(Security Bond)が不要
  • DP はそのまま。帯同家族としての立場は変わらない

本人にとっては条件の緩い道ですが、会社には負担があります。DP-WP の社員は会社の Work Permit の雇用枠(クォータ)に数えられ、毎月の雇用税(Foreign Worker Levy)もかかります。詳しくは次の章で説明します。

S Pass:中技能の仕事で自分のパスを持つ

S Pass は中技能の仕事向けのパスです。最低月給は一般の業種で S$3,300〜S$4,800、金融業で S$3,800〜S$5,650 です。2027年1月1日以降の新規申請からは、一般 S$3,600〜、金融 S$4,000〜 に引き上げられます。

会社側には、S Pass の雇用枠(サービス業では従業員の10%まで)と、1人あたり月 S$650 の雇用税がかかります。給与の基準を満たしていても、会社の枠が埋まっていれば申請できません。

EP:専門職・管理職として自分のパスを持つ

EP は専門職・管理職向けのパスです。最低月給は一般の業種で S$5,600(23歳以下)から S$10,700(45歳以上)、金融業で S$6,200 から S$11,800 です。2027年1月1日以降の新規申請からは、一般 S$6,000〜、金融 S$6,600〜 に引き上げられます。

給与に加えて、COMPASS という点数制の審査で40点以上が必要です。給与水準、学歴、会社の従業員構成などが評価されます。EP には会社の雇用枠と雇用税がないため、会社側の負担は3つの中で最も小さくなります。

DP 保持者が応募できる求人を見る →DP-WP の申請に対応する求人をパス別に絞り込めます。

DP-WP の会社側の負担と、応募前に確認すべきこと

DP-WP は本人の条件が緩いぶん、会社にとっては外国人雇用のコストがかかる採用です。求人に応募する前に、この点を理解しておくと話が進めやすくなります。

雇用枠(クォータ)

シンガポールの会社は、雇用できる Work Permit・S Pass 保持者の数に上限があります。上限は、会社が雇っているシンガポール人・PR の人数や業種によって決まります。DP-WP の社員もこの Work Permit の枠に数えられます。枠に余裕がない会社は、採用したくても DP-WP を申請できません。

雇用税(Foreign Worker Levy)

DP-WP の社員1人につき、会社は毎月雇用税を払います。金額は業種と、会社の外国人比率(Tier)によって決まります。業種ごとの最低水準は次のとおりです。

DP-WP にかかる雇用税の最低水準(月額・1人あたり)
業種現在の最低水準2028年からの変更
サービスS$300〜S$600Tier1/2 を統合し S$400
製造S$250〜S$550Tier1/2 を統合し S$300
建設S$300(オフサイト S$250)記載なし
プロセスS$200記載なし
造船S$350記載なし

日本人が応募することの多い飲食・小売・オフィスワークなどはサービス業に当たることが多く、月 S$300 以上の雇用税がかかります。短時間勤務で給与が少なくても雇用税は同じようにかかるため、パートや短時間の募集ほど、会社にとって負担の割合が大きくなります。

だから応募前に「DP-WP を申請してもらえるか」を確認する

こうした負担があるため、「DP の人は歓迎」と書いていても、DP-WP の申請までは想定していない会社があります。面接が進んでから「うちは申請できない」とわかると、お互いに時間を無駄にします。

  • 求人に対応パスとして DP(DP-WP)が明記されているかを見る
  • 明記がなければ、応募時に「DP 保持者のため DP-WP の申請が必要です」と最初に伝える
  • 会社に Work Permit の枠の余裕があるか、雇用税を会社が負担するかを確認する
  • 給与の基準で EP・S Pass に届く場合は、どのパスで申請するかを話し合う

雇用税は会社の負担

雇用税は雇用主が払うものです。給与から天引きするなどの扱いを提示された場合は、条件をよく確認し、疑問があれば MOM に問い合わせてください。

EP・S Pass に切り替えると DP は取り消される

DP 保持者が EP または S Pass を取ると、DP は取り消されます。以後は配偶者のパスに依存しない、自分自身のパスでの滞在になります。これにはよい面と注意すべき面があります。

よい面:配偶者の状況に左右されにくい

DP と DP-WP は、配偶者の EP や S Pass に連動しています。配偶者の赴任が終わったり、別の国へ転勤したりして配偶者のパスが終われば、DP も DP-WP も続けられません。自分の EP・S Pass であれば、配偶者のパスが終わっても、自分の雇用が続く限りそのパスで滞在・就労できます。

注意すべき面:自分の雇用に左右される

反対に、自分の EP・S Pass は自分の雇用に結びついています。退職や契約終了でパスが終われば、滞在の根拠もなくなります。配偶者がまだシンガポールで働いている場合、再び帯同家族として滞在するには、改めて DP の手続きが必要になると考えておきましょう。具体的な手続きや時期は MOM に確認してください。

  • 配偶者の任期が短く、自分もいっしょに帰国する予定なら、DP-WP のほうが手続きが単純な場合がある
  • 配偶者の任期終了後もシンガポールで働き続けたいなら、EP・S Pass で自分のキャリアを作る選択肢がある
  • どちらが有利かは家族の予定、仕事の内容、給与水準で変わる。会社と相談して決める

パート・短時間・在宅の仕事でもパスは必要

パート・短時間・単発の仕事

週に数時間のパートや短期のアルバイトでも、シンガポールで雇用されて働くならパスが必要です。「短時間だから」「知人の店の手伝いだから」という理由で、パスなしで働いてよいことにはなりません。DP 保持者が短時間の仕事をするなら、最低月給のない DP-WP が現実的な選択肢になります。

在宅で日本の会社の仕事をする場合

シンガポールに住みながら、日本の会社の業務をリモートで受けるケースもあります。シンガポールの会社に雇われていない場合にシンガポールのパスが必要かどうかは、MOM の公開情報では明確に説明されていません。働き方(雇用か業務委託か、相手先がどこか、報酬の受け取り方など)によって扱いが変わる可能性があります。

自己判断で始めず、事前に MOM に確認してください。税金の扱いも別に確認が必要です。シンガポールと日本のどちらで、どう申告するかは状況によって異なるため、IRAS や税理士など専門家に相談してください。

事業オーナー向け LOC

自分で事業を営む DP 保持者は、条件を満たせば LOC を取って DP のまま事業に携わることができます。雇われて働く場合の LOC は廃止されましたが、この事業オーナー向け LOC は残っています。

  • 対象:ACRA(会計企業規制庁)に登記された事業の個人事業主、パートナー、または株式の30%以上を持つ取締役
  • 更新の条件:Local Qualifying Salary 以上を支払うシンガポール人または PR を1名以上、3か月以上継続して雇用していること

つまり、最初の取得後も、事業を続けて現地の人を雇用していることが求められます。副業的に小さく始めたい場合は、この条件を満たせるかを事前に検討してください。申請の手続きと最新の条件は MOM の該当ページで確認できます。

配偶者がシンガポール人・PR の場合は LTVP と LOC

配偶者がシンガポール国民(SC)または永住者(PR)の場合、帯同家族のパスは DP ではなく、ICA(移民局)が発行する LTVP(Long-Term Visit Pass)になります。この場合、働くための仕組みも異なります。

配偶者のパスによる違い
配偶者自分のパス働くための方法
EP・S Pass 保持者DP(MOM 発行)DP-WP・EP・S Pass のいずれか
SC・PRLTVP(ICA 発行)会社が LOC を申請(EP・S Pass も可)
  • ICA 発行の LTVP 保持者は、雇用主が LOC を申請すれば働ける
  • LOC には雇用税・雇用枠がかからず、申請手数料も無料。処理はおよそ1週間
  • 採用前に PLOC(事前承認)を取っておくこともできる
  • MOM 発行の LTVP(EP・S Pass 保持者の家族に出るもの)は LOC の対象外

会社の負担が小さいため、LTVP 保持者は DP 保持者より採用のハードルが低くなります。同じ「帯同家族」でも、配偶者の立場によって条件が大きく違う点に注意してください。

LTVP 保持者が応募できる求人を見る →LOC で働ける求人を絞り込めます。

仕事探しの進め方

1. 自分が使える道を整理する

まず、自分の職歴・希望する給与・働ける時間から、DP-WP・S Pass・EP のどれが現実的かを考えます。フルタイムで専門職の経験があり、給与が EP の基準に届くなら EP も候補になります。短時間やパートを希望するなら、DP-WP が中心になります。配偶者の任期も考えに入れてください。

2. 対応パスが明記された求人を探す

求人を見るときは、仕事内容や給与と同じくらい、対応できるパスの記載を重視します。DP 保持者を受け入れる求人でも、DP-WP を申請するのか、EP・S Pass の基準を満たす人だけを想定しているのかは会社によって違います。パスで絞り込める求人サイトを使うと、この確認の手間を減らせます。

シンガポールの日本語求人一覧 →就労パスごとに求人を絞り込めます。

3. 応募時に伝えること

  • 現在のパスが DP であること
  • 働くには会社に DP-WP・EP・S Pass のいずれかを申請してもらう必要があること
  • DP の有効期限と、配偶者の赴任予定(わかる範囲で)
  • 希望する勤務日数・時間と、始められる時期

パスの状況を最初に伝えるのは不利になることではありません。会社が申請の可否をすぐ判断できるので、結果的に選考が早く進みます。

4. 面接で確認すること

  • どのパスで申請するか(DP-WP か、EP・S Pass か)
  • 申請は会社が行うこと、申請から就労開始までのおおよその期間
  • 雇用税を会社が負担すること
  • EP・S Pass の場合、DP が取り消されることを会社側も理解しているか
  • 配偶者の転勤などで退職が必要になった場合の扱い

5. パスが出るまで働き始めない

内定が出ても、パスが承認されて有効になるまでは働けません。研修や試用を「パスが出る前に少しだけ」と頼まれても応じないでください。無許可就労は本人と会社の両方に不利益が生じます。

よくある勘違い

  • 「DP なら会社が LOC を出せば働ける」→ 2021年5月以降、雇用される場合の LOC は廃止。DP-WP・EP・S Pass が必要
  • 「パートや数時間の手伝いならパスはいらない」→ 勤務時間にかかわらず、雇用されて働くならパスが必要
  • 「DP-WP なら会社の負担はない」→ Work Permit の雇用枠を使い、毎月の雇用税もかかる
  • 「EP を取っても DP はそのまま残る」→ EP・S Pass を取ると DP は取り消される
  • 「DP-WP は自分で申請する」→ 申請するのは雇用主
  • 「帯同家族ならみんな同じ条件」→ 配偶者が SC・PR なら ICA の LTVP になり、LOC で働ける
  • 「日本の会社のリモートワークなら何も問題ない」→ 公式に明確ではない。MOM に確認が必要

よくある質問

+DP(配偶者ビザ)のままシンガポールで働けますか?

DP だけでは働けません。雇用主に DP-WP を申請してもらえば、DP を保持したまま働けます。EP または S Pass を取る方法もありますが、その場合 DP は取り消されます。

+DP-WP に最低月給はありますか?

ありません。国籍の制限もなく、6か月ごとの健康診断や保証金も不要です。ただし会社には Work Permit の雇用枠が必要で、毎月の雇用税がかかります。

+週に数時間のパートでも就労パスは必要ですか?

必要です。勤務時間や雇用形態にかかわらず、外国人がシンガポールで働くには有効なパスが必要です。DP 保持者の短時間勤務なら DP-WP が一般的な選択肢です。

+配偶者が転勤になったら、DP-WP はどうなりますか?

DP-WP の有効期間は DP に連動します。配偶者のパスが終わって DP が終われば、DP-WP も続けられません。配偶者の状況に関係なく働き続けたい場合は、EP・S Pass を検討することになります。

+EP と DP-WP のどちらを選ぶべきですか?

給与が EP の基準に届き、配偶者の任期後も働きたいなら EP が候補になります。短時間勤務や配偶者と同時に帰国する予定なら、DP-WP のほうが合う場合があります。会社の枠や負担も関わるため、採用先と相談して決めてください。

+配偶者がシンガポール PR の場合も DP-WP が必要ですか?

いいえ。配偶者が SC・PR の場合は ICA 発行の LTVP になり、会社が LOC を申請すれば働けます。LOC は雇用税・雇用枠がかからず、手数料も無料です。

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