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シンガポールで働くために日本を出るときの手続き:住民票・税金・年金・健康保険・マイナンバーカード

最終確認:2026年9月30日

シンガポールの会社に現地採用で就職するときは、ビザや引っ越しの準備に加えて、日本側の手続きも必要です。住民票を抜くかどうかで住民税・年金・健康保険の扱いが変わり、出国前にしかできない手続きもあります。この記事では、総務省・国税庁・日本年金機構・協会けんぽ・自治体などの公式情報をもとに、日本の会社を辞めてシンガポールで働く人が日本側でやることを整理します。駐在員(日本の会社に在籍したまま赴任する人)と違う点も補足します。

全体の流れ

日本側の手続きの主なタイミング
時期やること
退職日まで健康保険を任意継続するか決める(退職の翌日から20日以内に申請)
出国の14日前〜前日海外転出届、マイナンバーカードの継続利用の申請、住民税・所得税の納税管理人の届出、国民年金の任意加入(希望する場合)
出国まで所得税の準確定申告(納税管理人を置かない場合)、国外運転免許証、郵便・銀行・証券口座の確認
シンガポール到着後在留届(大使館へ。3か月以上滞在する場合)
帰国したとき転入届(14日以内)、年金・健康保険の加入、納税管理人の解任

手続きの細かい内容は市区町村ごとに違う

必要な書類や窓口、オンライン申請の可否は市区町村によって違います。この記事の区市の記載は例です。出国前に、住んでいる市区町村の公式サイトで確認してください。

1. 海外転出届(住民票を抜く)

  • 住民基本台帳法で、転出する人は「あらかじめ」届け出ることになっている。正当な理由なく届け出ないと5万円以下の過料の対象
  • 対象はおおむね1年以上海外に住む予定の人(1年未満の出張・旅行などは必ずしも必要ない)
  • 出せるのは転出予定日のおおむね14日前から(渋谷区・中央区・江東区の例)。出国後に届け出る場合は、転出から14日以内(渋谷区の例、郵送も可)
  • 届け出ると、国民健康保険の資格確認書などを返す。住民票の写しのコンビニ交付は使えなくなる

海外転出届を出さずに出国すると、住民税は「市内に住んでいるもの」として課税されます(赤穂市の案内)。シンガポールで長く働くつもりなら、出国前に届け出ておくのが基本です。

国政選挙に海外から投票したい人は、在外選挙人名簿への登録が必要です。出国前に市区町村の選挙管理委員会で申請する方法(出国時申請)があります。

2. 住民税:1月1日の住所で決まる

住民税は、1月1日に住民票がある市区町村が、前の年の所得に対して課税します。年の途中で出国しても、その年度の住民税はなくなりません。

出国の時期と住民税の例(中央区・江東区の案内をもとに作成)
出国の時期住民税の扱い
2026年3月に出国2026年1月1日に住民票があるので、2026年度の住民税がかかる
1月2日〜6月ごろに出国今の年度分に加えて、翌年度分の住民税がかかることがある(翌年度分のためにも納税管理人が必要)
1月1日にすでに海外に住んでいるその年度の住民税はかからない

出国する年の払い方

  • 給与から天引き(特別徴収)されている人:最後の給与から残りをまとめて引くか、自分で払う方法(普通徴収)に切り替わる
  • 自分で払っている人:出国前に全額払うか、納税管理人に払ってもらう
  • 出国後の払い方の例(江東区):出国前に申し込んだ口座振替、クレジットカード納付

納税管理人を決めておく

納税管理人は、本人に代わって納税通知書を受け取り、税金を納める人です。家族などの個人でも法人でもかまいません。市区町村の税務の窓口に申告します(所得税の納税管理人とは別の手続き)。申告しないまま出国すると、通知書を送れないため公示送達になり、期限までに払わないと延滞金がかかることがあります。帰国したら解任の手続きをします。

3. 所得税:現地採用は年末調整がないことが多い

1年以上の予定で海外に住む人は、原則として日本の所得税法上の「非居住者」になります。シンガポールの会社から受け取る給与(国外での勤務の給与)には、原則として日本の所得税はかかりません(シンガポールの所得税がかかります)。

出国する年の精算

年の途中で会社を辞めた人は、原則として年末調整の対象になりません(国税庁 No.2665。12月の給与を受けた後の退職などは例外)。払いすぎた税金を取り戻す場合や、確定申告が必要な場合は、自分で申告します。

確定申告が必要な場合の申告の時期(国税庁 No.1926)
納税管理人申告する時期
届け出ずに出国する出国の時までに申告(準確定申告)と納税をする
届け出て出国する翌年の2月16日〜3月15日に、納税管理人を通じて申告する
  • 所得税の納税管理人は、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を税務署に出して決める
  • 申告で差し引ける社会保険料・生命保険料などは、出国の日までに払った分だけ
  • 前年の申告納税額が15万円以上の人は、出国の年の6月30日の時点で予定納税が決まる点にも注意(東京国税局の案内)

退職してから出国する人の手順は税務署へ

国税庁の案内の多くは、日本の会社から海外に転勤する人を前提にしています。退職してから出国する人の具体的な手順(源泉徴収票の扱いや還付の受け方など)は、出国前に住所地の税務署に確認すると安心です。

日本に家を貸すなど、日本での収入がある場合

非居住者でも、日本の不動産の家賃などの国内の所得には日本の所得税がかかり、確定申告が必要になることがあります。非居住者に払われる日本の不動産の賃料は、原則として支払いのときに20.42%が源泉徴収されます。

4. 年金:国民年金は任意加入できる

日本の会社を辞めると厚生年金の加入が終わり、海外転出届を出すと国民年金の強制加入の対象からも外れます(転出日の翌日に資格を失う。江東区の案内)。シンガポールでは、外国人(EP・S Pass)は CPF(シンガポールの公的年金)の対象外です。

海外に住んでいる間の国民年金の選択肢(日本年金機構)
任意加入する任意加入しない
対象20歳以上65歳未満の日本人—
年金額納めた分が老齢基礎年金に反映される反映されない
受給資格(10年)納付期間として数える20〜60歳の期間は「合算対象期間(カラ期間)」として数える
海外にいる間の障害・死亡障害基礎年金・遺族基礎年金の対象対象外
  • 申し込み:出国前は住んでいる市区町村。出国後は、日本にいる協力者(親族など)がいれば最後の住所地の市区町村、いなければ年金事務所
  • 保険料の払い方:日本の預貯金口座からの引き落とし、または日本にいる協力者が代わりに納める。付加保険料も納められる
  • 任意加入中は、保険料の免除や納付猶予は申請できない

日本とシンガポールには社会保障協定がない

厚生労働省の「社会保障協定の締結状況」(2026年6月2日時点)に、シンガポールは入っていません。協定がある国のように、加入期間を通算する仕組みはありません。

5. 健康保険:国保は抜ける、会社の保険は任意継続も

  • 国民健康保険:海外転出で資格を失う。保険料は届け出の翌月に再計算される(江東区の例)
  • 会社の健康保険(協会けんぽ):退職日までに継続して2か月以上加入していれば、退職後2年間「任意継続」できる。退職日の翌日から20日以内に申請(郵送は必着)
  • 任意継続の保険料は会社負担分も自分で払うため、原則として退職時の約2倍(計算の基礎は標準報酬月額の上限32万円)

海外に住みながら任意継続を続けられるかは、協会けんぽの公式情報では確認できませんでした。任意継続を考える人は、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)に確認してください。

健康保険には、海外で受けた治療費の一部が戻る「海外療養費」の制度がありますが、日本の健康保険に加入していることが前提です。現地採用で日本の健康保険をやめる人は、シンガポールの会社の医療保険や、自分で入る民間の保険で備えることになります。

シンガポールの医療費と医療保険 →外国人の医療費の目安、会社の医療保険、病院のかかり方をまとめています。

6. マイナンバーカード:出国前に継続利用の申請

2024年5月27日から、日本国籍の人は海外に転出した後もマイナンバーカードを使い続けられるようになりました。マイナポータルや e-Tax などのオンライン手続きに使えます。

  • 手続き:転出予定日の前日までに、海外転出届と一緒に「個人番号カード国外継続利用申請書」を出す
  • 申請しないまま出国すると、カードは転出予定日に失効する
  • 条件の例(渋谷区):カードの有効期限が1年以上あること、追記欄に余白があること
  • 署名用電子証明書は転出日に失効するため、海外で使いたい人は新しく発行を受ける(渋谷区の例)
  • 海外でなくしたとき:国外転出者向けの専用ダイヤル 03-6734-0170(24時間、国際通話料がかかる)

7. 在留届:3か月以上住むなら大使館へ

旅券法で、海外に3か月以上住む日本人は、住んでいる地域の日本の大使館・総領事館に「在留届」を出すことになっています(遅滞なく)。シンガポールの場合は在シンガポール日本国大使館です。外務省のオンライン在留届(ORRネット)で出せます。住所が変わったときや、シンガポールを離れるときも届け出ます。在留届は、災害や事件のときの安否確認や、大使館からの連絡に使われます。

8. 運転免許:12か月を超えて住むなら切り替えが必要

シンガポールでの運転(Singapore Police Force の案内)
シンガポールに住む期間必要なもの
12か月以内日本の運転免許証と国際運転免許証
12か月を超えるシンガポールの運転免許への切り替え(Basic Theory Test の合格などが条件)
  • 国際運転免許証は、出国前に住所地の都道府県の運転免許センターなどで取る。有効期間は発行日から1年で、更新はできない(警視庁の例では手数料2,250円)
  • シンガポールの免許への切り替えには、免許を取った国に1年住み、うち6か月以上は実際に住んでいたことを示す書類が必要
  • 日本の免許が失効すると国際運転免許証も使えなくなる。日本の免許の更新時期も確認しておく

9. 郵便・銀行口座・NISA

  • 郵便:日本郵便は海外への転送をしていない。日本の郵便物の受け取りは家族に頼むなどの方法を考えておく
  • 銀行・証券口座:非居住者になった後に口座を続けられるか、取引の制限があるかは金融機関ごとに違う。出国前に各金融機関に確認する
  • NISA:「転任の命令等のやむを得ない事由」で一時的に出国する場合は、手続きをすれば一定の期間、非課税で持ち続けられる(出国中の買付けはできない)。自分で転職して現地採用になる場合は対象外になる可能性が高いため、金融機関に確認する

10. 日本に帰ってきたとき

  • 転入届:住み始めてから14日以内に市区町村へ
  • 国民年金:日本に住所を持つと強制加入に戻る(一時帰国で短期間だけ住民登録した場合も、その期間は強制加入)
  • 健康保険:日本の会社に就職すれば会社の健康保険、それ以外は国民健康保険に入る
  • マイナンバーカード:転入のときに継続利用の手続きをする
  • 納税管理人:住民税・所得税とも解任の届け出をする
シンガポールで退職・帰国するときの手続き →シンガポール側の手続き(パスのキャンセル・税務清算 IR21)と、帰国後の日本の手続きをまとめています。

駐在員の場合との違い

現地採用と駐在員(日本の会社に在籍したまま赴任)の違い
項目現地採用駐在員
所得税の精算年末調整がないことが多く、自分で申告会社が出国の日までに年末調整をする
厚生年金退職で終わる。国民年金に任意加入できる日本の会社に在籍する限り続く
健康保険会社の保険は退職で終わる(任意継続も)続く。海外療養費も使える
介護保険—海外に住所を移すと対象外になるため、会社が届出をする
NISA継続できない可能性が高い(金融機関に確認)転任の命令なら手続きで継続できる

出国前のチェックリスト

  • 健康保険を任意継続するか決めた(退職の翌日から20日以内)
  • 海外転出届を出した(転出予定日の14日前から)
  • マイナンバーカードの継続利用を申請した(転出予定日の前日まで)
  • 住民税の納税管理人を決めた、または全額納付した
  • 所得税の準確定申告をした、または納税管理人を届け出た
  • 国民年金に任意加入するか決めた
  • 国際運転免許証を取った(運転する場合)
  • 銀行・証券口座・NISA・クレジットカードの扱いを金融機関に確認した
  • 到着後に在留届を出す

よくある質問

+シンガポールで働くとき、住民票は抜いたほうがいいですか?

おおむね1年以上海外に住むなら、海外転出届を出すのが基本です。届け出ないと住民税が引き続き課税され、正当な理由なく届け出ない場合は過料の対象にもなります。

+年の途中で出国したら、その年の住民税は払わなくていいですか?

いいえ。住民税は1月1日の住所で決まるため、その年度の住民税は出国後も払う必要があります。1月2日〜6月ごろに出国した人は、翌年度分がかかることもあります。納税管理人を決めておきましょう。

+海外に住んでいる間、国民年金はどうなりますか?

強制加入ではなくなりますが、20歳以上65歳未満の日本人は任意加入できます。任意加入しない20〜60歳の期間は、受給資格の10年には数えますが年金額には反映されません。日本とシンガポールには社会保障協定がありません。

+マイナンバーカードは海外でも使えますか?

2024年5月27日から、出国前に継続利用の申請をすれば使い続けられます。転出予定日の前日までに、海外転出届と一緒に申請してください。申請しないと転出予定日に失効します。

+シンガポールで日本の運転免許は使えますか?

住む期間が12か月以内なら、日本の免許と国際運転免許証で運転できます。12か月を超えて住む場合は、シンガポールの免許への切り替えが必要です。

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