シンガポールで働く人の労働条件の基本:有給休暇・病気休暇・祝日・残業・試用期間と退職の予告
最終確認:2026年9月29日
シンガポールの労働条件の基本は、雇用法(Employment Act)で決められています。日本の労働基準法と似た部分もありますが、有給休暇の日数や残業代の対象になる人の範囲などは大きく違います。特に、月給が一定額を超える人や管理職は、労働時間や残業代の規定の対象外になる点は、日本と比べて驚く人が多いところです。この記事では、MOM(人材開発省)の公式情報をもとに、EP・S Pass などで働く日本人が知っておきたい労働条件の基本を整理します。
雇用法の対象:外国人も管理職も対象
雇用法は、雇用契約のもとで働くすべての従業員が対象です。国籍は関係なく、EP や S Pass で働く外国人も含まれます。フルタイムだけでなく、パートタイムや契約社員も対象です。対象外になるのは、船員、家事労働者、公務員・法定機関の職員です。
管理職(managers and executives)も雇用法の対象です。ただし、雇用法の中の「Part 4」と呼ばれる部分は、一定の月給以下の人だけが対象です。Part 4 には、労働時間、残業代、休息日などの規定が含まれます。
| 区分 | 月額基本給の条件 |
|---|---|
| ワークマン(肉体労働が中心の人) | S$4,500 以下 |
| ワークマン以外(事務・販売・専門職など) | S$2,600 以下 |
| 管理職・エグゼクティブ | 金額に関係なく対象外 |
ここでいう基本給には、残業代、賞与、13か月目の給与(AWS)、各種手当は含まれません。EP の最低月給はこの金額を大きく上回るため、EP で働く人の多くは Part 4 の対象外です。一方で、年次有給休暇、病気休暇、祝日、給与の支払い、退職の予告などの規定は、Part 4 の対象外の人にも適用されます。
雇用契約が大切になる
Part 4 の対象外の人は、労働時間や残業代の扱いが雇用契約で決まります。雇用法の最低基準を下回らない範囲で、会社ごとに条件が違うということです。入社前に雇用契約書の内容をよく確認してください。
年次有給休暇:1年目7日、8年目以降14日
同じ会社で3か月以上働くと、年次有給休暇(annual leave)を取れます。法律で決まっている最低日数は、1年目が7日で、1年ごとに1日ずつ増え、8年目以降は14日です。日本の法定日数(半年後に10日)と比べると少なく感じますが、これはあくまで最低基準です。実際には、雇用契約でこれより多い日数を定めている会社も多くあります。
| 勤続 | 日数 |
|---|---|
| 1年目 | 7日 |
| 2年目 | 8日 |
| 3年目 | 9日 |
| 4年目 | 10日 |
| 5年目 | 11日 |
| 6年目 | 12日 |
| 7年目 | 13日 |
| 8年目以降 | 14日 |
1年に満たない期間は、働いた月数に応じて按分されます。求人や内定の段階で「有給休暇は年何日か」を確認しておくと、法定の日数との違いが分かります。使わなかった休暇の繰り越しや買い取りの扱いは、Part 4 の対象外の人は雇用契約で決まるため、あわせて確認しておきましょう。
病気休暇と入院休暇
病気で働けないときの有給の病気休暇(sick leave)も、雇用法で決まっています。同じ会社で3か月以上働き、医師の診断を受けていることが条件です。日数は勤続月数で増え、6か月以上で上限になります。
| 勤続 | 外来の病気休暇 | 入院休暇 |
|---|---|---|
| 3か月 | 5日 | 15日 |
| 4か月 | 8日 | 30日 |
| 5か月 | 11日 | 45日 |
| 6か月以上 | 14日 | 60日 |
入院休暇の60日には、外来の病気休暇の14日が含まれます。休むときは48時間以内に会社へ連絡する必要があります。3か月未満の病欠は無給になるため、働き始めてすぐの時期は注意してください。
祝日:年11日
シンガポールの祝日は年11日で、雇用法の対象者は有給で休めます。祝日が日曜日などの休息日と重なった場合は、翌日の勤務日が有給の休日になります。土曜日など勤務のない日と重なった場合は、代休か、その日分の給与が支払われます。
祝日の前後の勤務日に、理由なく会社を休むと、祝日の給与を受け取れない決まりもあります。祝日に出勤を求められる職場(飲食・小売など)では、代休や手当の扱いを契約で確認しておくと安心です。
労働時間と残業代
労働時間と残業代の規定は、Part 4 の対象者(月額基本給が S$2,600 以下のワークマン以外の人など)だけに適用されます。対象者の場合、所定の労働時間は週5日以下の勤務なら1日9時間・週44時間までで、それを超えると基本の時給の1.5倍以上の残業代が支払われます。残業は月72時間までで、残業代は給与期間の終了から14日以内に支払われます。
EP で働く人や管理職など、Part 4 の対象外の人は、労働時間や残業代を雇用契約で決めます。「残業代は給与に含まれる」「管理職なので残業代はない」という契約も珍しくありません。日本の感覚で「残業すれば残業代が出る」と考えず、面接や内定の段階で勤務時間と残業の扱いを確認してください。
試用期間と退職の予告期間
シンガポールでは、入社後に試用期間(probation)を置く会社が多くあります。試用期間の長さや条件は雇用契約で決まります。MOM の案内では、契約で試用期間中の予告期間を別に定めていなければ、試用期間中も本採用後も同じ予告期間になります。
会社を辞めるとき、または会社から契約を終了されるときは、雇用契約に書かれた予告期間(notice period)が適用されます。契約に定めがない場合は、勤続期間に応じて次の法定の予告期間になります。
| 勤続期間 | 予告期間 |
|---|---|
| 26週未満 | 1日 |
| 26週以上2年未満 | 1週間 |
| 2年以上5年未満 | 2週間 |
| 5年以上 | 4週間 |
実際には、雇用契約で「1か月」や「2か月」などの予告期間を定めていることが多いです。予告は書面(メールでも可)で行い、予告した日や休日も期間に数えます。予告期間を置く代わりに、その期間分の給与を支払って(または受け取って)すぐに契約を終えることもできます。これを salary in lieu of notice と言います。
転職の日程は予告期間から逆算する
次の会社の入社日は、今の会社の予告期間と、次の会社のパスの申請期間の両方を考えて決めます。面接で入社可能日を聞かれたときも、予告期間を前提に答えるようにしましょう。
給与の支払い・給与明細・雇用条件書
- 給与は少なくとも月1回、給与期間の終了から7日以内に支払われる(残業代は14日以内)
- 給与明細(itemised payslip)は、給与の支払いと同時か、支払いから3営業日以内に渡される。紙でも電子でもよい
- 主な雇用条件を書いた書面(KETs:Key Employment Terms)が、勤務初日から14日以内に渡される。職務、勤務地、給与、休暇、試用期間、予告期間などが書かれる
- 退職するときの最終給与は、辞め方によって最終勤務日、または最終勤務日から7日以内などに支払われる
外国人が退職する場合は、税務清算(IR21)のために、会社が最終給与などの支払いを一時的に止めることがあります。これは法律に基づく手続きです。退職の流れは、退職・帰国の手続きの記事で詳しく説明しています。
退職・帰国するときの手続き →パスのキャンセル、税務清算(IR21)、家族のパス、日本に戻った後の手続きまでまとめています。出産・育児の休暇(外国人の場合)
シンガポールには政府が費用を負担する出産休暇(16週)、父親休暇、育児休暇がありますが、これらは子どもがシンガポール国籍であることが条件です。日本国籍の子どもの場合は、雇用法に基づく休暇が対象になります。
| 休暇 | 内容 |
|---|---|
| 出産休暇 | 12週。うち最初の8週が有給(出産時に存命の子どもが2人未満の場合)、残り4週は無給。継続3か月以上の勤務が必要 |
| 育児休暇 | 年2日(7歳未満の子ども、3か月以上の勤務が必要) |
子どもがシンガポール国籍でない場合の父親休暇について、雇用法での扱いは公式情報で確認できませんでした。家族を持つ予定がある人は、会社独自の休暇制度があるかも含めて、雇用契約や就業規則で確認してください。
解雇・整理解雇と困ったときの相談先
整理解雇(retrenchment)の手当は、法律で義務づけられてはいません。金額は雇用契約や労働協約で決まり、定めがなければ会社との話し合いになります。MOM の案内では、勤続2年以上の人に、勤続1年につき給与の2週間分〜1か月分が相場とされています。
給与の未払いや不当な解雇など、会社との間で問題が起きたときは、TADM(Tripartite Alliance for Dispute Management)に相談できます。TADM は政府・労働組合・経営者団体が作った機関で、助言と調停を行い、まとまらない場合は雇用請求審判所(ECT)で扱われます。外国人も利用できます。
| 内容 | 期限 |
|---|---|
| 給与などの請求(在職中) | 問題が起きてから1年以内 |
| 給与などの請求(退職後) | 最終勤務日から6か月以内 |
| 不当解雇の申し立て | 最終勤務日から1か月以内(妊娠中の人は出産から2か月以内) |
退職後の期限は短いため、問題があれば早めに相談することが大切です。
公正な採用と職場公正法
シンガポールでは、年齢・国籍・性別・人種・宗教などではなく、能力と経験で採用や評価を判断する「公正な雇用」が重視されています。現在は、政府・労働組合・経営者団体が作った「公正雇用慣行に関する三者ガイドライン」を TAFEP という機関が運用しています。
差別を法律で禁じる職場公正法(Workplace Fairness Act)は2025年に成立し、2027年末ごろの施行が予定されています。2026年9月時点ではまだ施行されていません。
入社前に確認したいことのチェックリスト
- 月給(固定の基本給)と、賞与・13か月目の給与(AWS)・手当の内訳
- 勤務時間と、残業代が出るかどうか(Part 4 の対象か、契約でどう決まっているか)
- 年次有給休暇の日数と、使わなかった休暇の繰り越し・買い取り
- 試用期間の長さと、試用期間中・本採用後の予告期間
- 医療保険の有無と内容(病気休暇とは別に、医療費の補助があるか)
- 就労パスの申請を会社が行うこと、申請の時期
これらは KETs(雇用条件書)や雇用契約書に書かれます。書面で受け取り、内容を確認してから署名してください。
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+シンガポールの有給休暇は何日ですか?
雇用法の最低日数は、同じ会社で3か月以上働いた人で1年目7日、1年ごとに1日増えて8年目以降14日です。雇用契約でこれより多い日数を定めている会社も多いので、契約を確認してください。
+EP で働く場合、残業代は出ますか?
雇用法の残業代の規定は、月額基本給が S$2,600 以下(ワークマンは S$4,500 以下)の人などが対象で、管理職は対象外です。EP で働く人の多くは対象外のため、残業代の有無は雇用契約で決まります。
+外国人も雇用法で守られますか?
はい。雇用法は国籍に関係なく、雇用契約のもとで働くすべての従業員が対象です(船員・家事労働者・公務員などを除く)。困ったときは TADM に相談できます。
+退職するときは何日前に伝えればよいですか?
雇用契約に書かれた予告期間に従います。契約に定めがなければ、勤続26週未満は1日、2年未満は1週間、5年未満は2週間、5年以上は4週間です。予告は書面(メールでも可)で行います。
+試用期間中でもすぐに辞められますか?
試用期間中の予告期間は雇用契約で決まります。契約で別に定めていなければ、本採用後と同じ予告期間になります。予告期間分の給与を支払って、すぐに契約を終えることもできます。
+日本国籍の子どもでも出産休暇は取れますか?
雇用法の対象で継続3か月以上働いていれば、12週の出産休暇を取れます。有給は最初の8週で、出産時に存命の子どもが2人未満の場合に限られます。政府負担の16週の出産休暇は、子どもがシンガポール国籍の場合の制度です。
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