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シンガポールで内定をもらったら:雇用契約書・オファーレターの確認ポイント

最終確認:2026年10月4日

シンガポールで内定をもらうと、オファーレター(letter of appointment)や雇用契約書が届きます。英語の書面で、日本の雇用契約とは書き方も考え方も違うため、どこを見ればよいか迷う人も多いはずです。この記事では、MOM(人材開発省)の公式情報と法律の条文をもとに、署名の前に確認したい項目をチェックリストの形で整理します。休暇の日数や残業代の計算などの細かいルールは、それぞれの記事やツールで確認できます。

まず知っておきたいこと:雇用法と KETs

シンガポールの雇用法(Employment Act)は、雇用契約のもとで働く人なら国籍に関係なく対象です。2019年4月1日からは、管理職・エグゼクティブも給与の額に関係なく、雇用法の基本的な規定の対象になりました(船員・家事労働者・公務員などを除く)。ただし、労働時間・残業代・休息日の規定(Part 4)は一定の月給以下の人だけが対象で、EP で働く人の多くは対象外です。その部分は雇用契約で決まります。

雇用契約は、書面のほか口頭でも成立し、オファーレターも契約の形の一つです。MOM は、条件の食い違いを防ぐため書面にすることを勧めています。そのうえで法律は、会社に主な雇用条件を書面で渡すことを義務づけています。これが KETs(Key Employment Terms:主要雇用条件)です。

  • 対象:雇用法の対象で、14日以上続けて雇われる人(2016年4月1日以降の雇用契約)。国籍は関係なく、EP・S Pass で働く人も含まれる
  • 期限:勤務を始めた日から14日以内。MOM の三者ガイドラインは、できるだけ勤務開始の前に渡すよう勧めている
  • 形式:紙でも電子データでもよい。会社のウェブサイトや社員ハンドブックに載せる方法も認められている。電子データは印刷して手元に残せる形にする
  • 内容が足りない・間違っている場合も、会社の義務違反になる

署名の前に書面で確認する

KETs は勤務開始から14日以内に渡せばよいことになっていますが、給与や予告期間などは、入社を決める前に知っておきたい内容です。オファーの段階で書面にない項目があれば、署名の前にメールなどで確認し、回答を記録に残しておきましょう。

KETs に書かれる項目(チェックリスト)

MOM は、KETs に次の項目を書くよう定めています(本人に関係しない項目は省略できます)。オファーレターや雇用契約書を受け取ったら、この一覧と照らし合わせると、抜けている条件に気づきやすくなります。

KETs の項目と確認のポイント(MOM)
項目確認のポイント
会社名・本人の氏名契約する会社(法人名)が、就労パスを申請する会社と同じか
職名・主な職務と責任面接で聞いた仕事内容と合っているか
勤務開始日今の会社の予告期間や、パスの申請にかかる期間を考えて無理がないか
雇用期間(期間の定めがある契約のみ)契約社員の場合、期間と更新の扱い
勤務の取り決め1日の勤務時間、週の勤務日数、休息日
給与期間月給か、ほかの期間か
基本給毎月決まって払われる額。手当とは分けて書かれているか
固定の手当住宅手当・食事手当など、毎月変わらない手当の額
固定の控除毎月差し引かれるものがあるか
残業代の支払期間・残業の単価残業代が出る契約か。管理職などで残業代がない場合は省略できる
そのほかの給与(賞与・インセンティブなど)AWS(13か月目の給与)や賞与の条件
休暇の種類年次有給休暇・病気休暇・入院休暇・出産休暇・育児休暇など
そのほかの医療の福利厚生医療保険、医療費・歯科の補助
試用期間長さと、試用期間中の条件
予告期間会社・本人のどちらから契約を終える場合も同じ長さか
勤務地(任意)オフィスの場所、在宅勤務の扱い

給与を受け取るたびに、給与明細(itemised payslip)も渡されます。雇用法の対象者には、給与の支払いと同時か、支払いから3営業日以内に、基本給・手当・控除・残業代などの内訳を書いた明細を渡すことが会社に義務づけられています。紙でも電子でもかまいません。

給与:基本給と固定手当を分けて見る

オファーレターでは、年収(annual package)だけが大きく書かれていることがあります。日本の感覚で年収を12で割って月給と考えると、実際の月給と違うことがあるので、月ごとの内訳を確認してください。

  • 基本給(basic salary):業績や休暇に関係なく、毎月変わらずに払われる給与
  • 固定の手当(fixed allowances):住宅手当・食事手当など、毎月同じ額が払われる手当
  • 変動する給与:賞与(bonus)、AWS、コミッション、インセンティブ、残業代など

就労パスの最低月給は「基本給+固定手当」で判断される

EP・S Pass の申請で使う「固定月給(fixed monthly salary)」は、基本給と固定の手当を足した額です。賞与、AWS、コミッション、変動する手当、残業代、経費の精算などは含まれません。年収が十分でも、固定月給がパスの最低額に届かないと申請の条件を満たさないため、内訳を確認しておきましょう。

就労パスの最低月給を確認する →年齢と業種から、EP・S Pass の最低月給の目安がわかります。

AWS(13か月目の給与)と賞与は契約次第

MOM は、AWS は法律上の義務ではなく、雇用契約や労働協約の内容によると説明しています。賞与も、契約や労働協約に書かれていなければ支払いの義務はありません。「AWS 1か月分」「業績に応じた賞与」など、どう書かれているかで扱いが変わります。年収に AWS や賞与を含めて提示されている場合は、確実に払われる部分と、条件次第の部分を分けて確認しておくと安心です。

勤務時間・残業・休暇

残業代についての雇用法の規定(Part 4)は、ワークマン(肉体労働が中心の人)以外では月額基本給 S$2,600 以下の人などが対象で、管理職・エグゼクティブは対象外です。EP で働く人の多くは対象外のため、勤務時間と残業代の扱いは契約の書き方で決まります。「残業代は給与に含む」「残業代なし」と書かれていないか、勤務時間とあわせて確認してください。

残業代の対象かを確認する →月給と職種から、法律上の残業代の対象になるかと、最低額の目安がわかります。

年次有給休暇と病気休暇は、法律で最低日数が決まっています。契約の日数がこれを上回っているか、使わなかった休暇の繰り越しや買い取りをどうするかを確認しましょう。管理職・エグゼクティブの未消化の休暇の扱いは、MOM も雇用契約を見るよう案内しています。祝日に働いた場合の扱いも、契約で確認しておくと安心です。

休暇の法定日数を計算する →勤続年数から、年次有給休暇・病気休暇などの法定の最低日数がわかります。シンガポールの祝日 →祝日の一覧と、祝日に働いたときの扱いをまとめています。

試用期間と予告期間

試用期間(probation)の長さは契約で決まります。試用期間中だからといって、法律上の休暇がなくなるわけではありません。MOM は、同じ会社で3か月以上働けば、試用期間中でも年次有給休暇と病気休暇を取れると説明しています。

  • 予告期間(notice period):契約で決めた長さが適用される。法律で、会社から終える場合と本人から辞める場合で同じ長さにすることになっている
  • 試用期間中の予告期間:契約で別に定めていなければ、本採用後と同じ
  • 予告は書面で行う(メールでもよい)。予告した日や休日も期間に数える
  • 予告期間の代わりに、その期間分の給与を払って(または受け取って)すぐに契約を終えることもできる(salary in lieu of notice)
  • 契約に予告期間の定めがない場合は、勤続期間に応じた法定の予告期間になる

「1か月」「2か月」などの予告期間は、次に転職するときの入社日にも影響します。法定の予告期間の日数や、未消化の有給休暇で予告期間を短くする方法は、労働条件の基本の記事にまとめています。

シンガポールの労働条件の基本 →休暇の日数、残業代の対象、法定の予告期間の表、給与の支払いのルールをまとめています。

医療保険:S Pass は会社に義務、EP は任意

S Pass で働く人には、会社が医療保険(年 S$60,000 以上の補償)をかけることが義務づけられています。MOM は、この保険料を本人に負担させてはいけないとしています。一方、EP で働く人の医療保険は会社の任意です。シンガポールでは外国人の医療費が高くなりやすいため、医療保険の有無と内容(外来・入院・歯科、家族も対象か)をオファーの段階で確認しておきましょう。

シンガポールで働く外国人の医療 →医療費の目安と、会社の医療保険の確認ポイントをまとめています。

就労パスの条件と費用

外国人は、有効な就労パスがないとシンガポールで働けません(会社が雇うことも、本人が働くことも法律で禁止されています)。そのため、オファーは「就労パスが承認されること」を条件にしているのが一般的です。パスの申請は会社(または会社が頼んだ人材紹介会社)が行います。

  • 就労パスの申請・発行・更新の手数料、外国人雇用税(levy)、MOM が求める医療保険や健康診断の費用は、法律で会社が負担することになっている
  • 会社がこれらの費用を本人に負担させた場合、MOM は会社に最大 S$20,000 の制裁金を科せる
  • 採用や雇用の継続の見返りに、会社などが本人からお金を受け取ったり給与から差し引いたりすることは犯罪で、最大 S$30,000 の罰金か2年以下の禁錮、またはその両方が科される。オファーを受けた段階の人も法律の対象に含まれる

「パスの費用を払ってほしい」と言われたら

就労パスの手数料を本人に払わせる、給与の一部を会社に戻させる、といった求めは違法の可能性があります。MOM の「Report an infringement」や電話(6438 5122)で知らせることができます。人材紹介会社の手数料は別の法律の扱いになるため、請求の内容と名目を書面で確認してください。

EP の申請の流れ →必要書類、審査の期間、IPA(事前承認)からパスの発行までの流れをまとめています。

競業避止などの条項

雇用契約には、退職後に競合する会社で働くことや、元の顧客・同僚を誘うことを一定期間禁じる条項(restrictive covenants、restraint of trade)が入っていることがあります。MOM は国会答弁で、こうした条項は守るべき正当な事業上の利益がある場合に限って有効で、範囲・地域・期間が合理的でなければならないという考え方を示しています。

MOM は政府・労働組合・経営者団体で、この条項の使い方についてのガイドラインを検討していると答弁しています(2025年1月時点)。条項があるときは、禁止される期間・地域・業種の範囲を確認し、転職の可能性に大きく関わりそうなら、署名の前に会社に説明を求めるか、弁護士に相談してください。

署名したあと・条件が違ったとき

  • 署名したオファーレター・雇用契約書・KETs は、写しを手元に保管する
  • 勤務開始から14日以内に KETs を受け取っているか確認する
  • 最初の給与明細で、基本給・手当・控除が契約どおりか確認する
  • 条件を変えるときは、事前に説明を受け、変更後の条件を書面でもらう

給与の未払いや、契約と違う扱いを受けたときは、TADM(Tripartite Alliance for Dispute Management)に相談できます。外国人も利用でき、退職後は申し立ての期限が短くなるため、早めに動くことが大切です。

シンガポールの職場のトラブルと相談先 →給与の未払いや解雇など、会社と問題になったときの相談先と流れをまとめています。

よくある質問

+KETs(主要雇用条件の書面)はいつまでにもらえますか?

雇用法の対象で14日以上雇われる人には、勤務を始めた日から14日以内に書面で渡されます。国籍は関係なく、EP・S Pass で働く人も対象です。MOM の三者ガイドラインは、できるだけ勤務開始の前に渡すよう勧めています。

+EP の最低月給には、賞与や AWS も含まれますか?

含まれません。就労パスの「固定月給」は、基本給と毎月決まった額の手当(住宅手当など)を足した額です。賞与、AWS、コミッション、変動する手当、残業代は含まれません。

+AWS(13か月目の給与)は必ずもらえますか?

法律上の義務ではありません。MOM は、AWS は雇用契約や労働協約の内容によると説明しています。賞与も、契約などに書かれていなければ支払いの義務はありません。契約の書き方を確認してください。

+試用期間中は有給休暇を取れませんか?

同じ会社で3か月以上働いていれば、試用期間中でも年次有給休暇と病気休暇を取れると MOM は説明しています。3か月未満は法律上の有給休暇の対象外のため、契約で別の扱いがあるか確認してください。

+予告期間は会社と自分で違ってもよいのですか?

雇用法では、予告期間は会社と本人で同じ長さにすることになっています。長さは契約で決め、契約に定めがなければ勤続期間に応じた法定の期間になります。

+就労パスの申請費用を自分で払うように言われました。

就労パスの申請・発行の手数料や外国人雇用税などは、法律で会社が負担することになっており、本人に負担させた会社には MOM が制裁金を科せます。採用の見返りにお金を払わせることも犯罪です。MOM に知らせることができます。

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